- 名前
- アスラン
- 性別
- ♂
- 年齢
- 44歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 今年で30 知っとるけのけ! …こんな30になるなんて、自分でも思っていませんでした...
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【短編】名もない花
2009年11月04日 00:56
「あら、かわいい。私の蜜を吸ってよろしくてよ?
ここまで登ってこれたらね。」
鋭い棘を持つバラはふふっと笑った。
「そんな堅物、相手にしなければいいのさ。
ほら、私の蜜はこんなにもいい香り。」
甘い芳香を放ちながらウツボカズラは言う。
そんな二人を無視して、彼は日の影でひっそりと咲く名もない花に止まった。
決して美しくもなく、決して甘い香りも放っていないその白い花は、
もし月に花が咲いているとしたらきっとこんな花なんだろう、
と思わせる神秘性を秘めていた。
蜜は決して甘くはないが、よほど栄養価が高いのだろう、
彼はみるみる力が充満していくのを感じ、再び大空へと舞い上がっていった。
彼が高い木の枝にとまろうとした時だった。
彼の激しくはためかせている4枚の羽根が羽ばたきを止まる事はなく、
高い木のてっぺんを飛び越えてしまった。
彼は必死に地上をめがけ、意識を集中している様子であったが、
その後もとどまる事を知らず、山を越え、雲を越え、
大気圏へと突入した時、その身体自体は燃え尽きてしまったのだが、
羽根は羽ばたき続け、灰となった身体を運んでいった。
羽根は、とうとう月に到着した。
とあるクレーターの影の上空に達した時、羽根は羽ばたきを止めた。
灰は力なくクレーターめがけてゆらゆらと舞い落ちて、
名もない花にふりかかり、白い花びらを黒く染めた。
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