趣味は読書、覆面の告白

高校二年になったばかりの春、父が亡くなった。
その時、僕は「この世にはどうにもならないことがある」と知らされ、「どうせ、人間は死んでしまうのだ」という虚無感が心に刻まれた。
それは、暫くの間、ふっと顔を出しては、僕のその時々の行動に水を差した。
やがて、「何をやってもどうせ死ぬんじゃないか」という自暴自棄的な感覚を抱くようになった。
一浪して、大学に入ったが、なかなか周囲に馴染めず、肉体労働のアルバイトや、ギャンブルを覚え、大学からは足が遠のき、結局中退。
その間に、母が亡くなった。
一緒に住む家族はいなくなり、親戚とも疎遠に。
その後も、バイト生活を続け、流れに任せて今の自分になっている。
大した恋愛もしなかった。
やり直せるなら、大学に入った頃から、やり直したい。親一人子一人の苦しい暮らしの中から、母は大学に行かせてくれたのだから。
しかしそれは詮無いこと。
僕に出来るのは、やり直すことではなくて、新しく始めることだけである。
(この世迷言はフィクションです)