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切腹; 見た映画 May ’06 (4)

2006年05月16日 02:04

切腹  1962・松竹  108分


監督:小林正樹
原作:滝口康彦
脚本:橋本 忍
撮影:宮島義勇
音楽:武満 徹

出演:仲代達矢
    三國連太郎
    岩下志麻
    石浜 朗
    丹波哲郎
    稲葉義男
    中谷一郎
    佐藤 慶


1962年のフィルムからデジタル化したからか、それとも中国製のDVDなのかもしれないが戦前の白黒映画を観るような暗さで、見たいものが見られなくて困ったところもあったが、さりとてそれもこの話の陰惨さを考えれば分からなくも無いことでもあるし却って効果的でもある。 モノクロにも今ではこういうのは見たくても作らないだろうから。

前年に「人間の条件」を撮った監督であればこの陰惨さは充分理解できるし、その不条理にたいする矛先と映画的解決は「人間の条件」での定本の内容を銀幕に移し変えるものに比べると扱いが易しかったのだろう。 対話を繋げて野外のシーンを少なくしているしスタジオでの撮影が殆どである。 私の今住むところからあまり遠くない砂丘に酷似する川原での決闘ぐらいだったろうか、野外は。 井伊家の門構えに驚いたものだ、果たして事実であれば大したものだ、今までこういう門構えを見たことが無い。

30年以上前に観て記憶が定かでなかったが、これほど覚えていなかったとはあきれたほどだ。 20代の前半に観ていて記憶にないということは自分の眼が節穴だったのかもしれぬ。 今、50の半ばを越して観るのとは勿論、世の中に対する見方、経験も幾分か加わっているのだが、その時の自分がここにいたら阿呆と、と笑ってやりたい

さすが切腹のシーンは覚えていたが、後年、三島の「憂国」を見ているのでそれに比べると言う事はない。 ただ、驚いたのはそれぞれの顔の良さだ。 仲代の顔は今まで見た中で一番、三国錬太郎もよい。 丹波哲郎も後年の重厚さにくらべるとこちらの方が現実味を帯びていてこれを取る。 夕方テレビマリア・カラスポートレート、手紙を蒐集している人のコレクションを観たがそのモノクロポートレートに比する美しさである。 

この数年後、ラフディオ・ハーンに材を採る「怪談」のトーン、中谷昇の行灯のシーンが印象的である。 

殺陣といっても決闘シーンはまあまあ、最後はちゃんばらお祭り騒ぎの場になるのだがどうも現実感が薄い。 けれども「大菩薩峠」の殺陣よりはましだ。 それにしても手練れの使い手の刀の軽いことに驚くばかりだ。 現実的な殺陣はこの頃、五社英雄三匹の侍、の殺陣に納得したものだがここではそれまでの伝統的なチャンバラになっている。 話はともかく人が人を傷つけることの処理は日米に似たようなことだが、アメリカでは70年代、ニューシネマの西部劇神話を破る試みはなされている。 様式に進めば歌舞伎の手踊りに行き着くのだろうが、それまでの脚本、語り、科白が効果を出しているのだから殺陣に工夫があればと惜しい思いをした。

今時、映画を勉強する者以外にこれを観る若者はいるのだろうか。

それで、しばしば私の前に立つさまざまな物乞いには私は何も与えない。

このデジログへのコメント

  • BB 2006年05月16日 02:45

    このえーがは知りませんでした。。。
    しかし評論家っぽくてスゴイなぁ
    ワタシには書けませんワ

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